散歩道<4966>
                         オピニオン・インタビユー・よみがえれ日本経営
                       カギは中間管理職 現場とトップ結ぶ 仲介役を鍛えよ(5)       

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・・・日本企業は米国流を過剰に取り入れ、分析ばかり細分化ばかり。はたまた暗黙知だけを墨守したのが不振の理由ということですね。その間、米国は何をしていたのですか。
  「私たちは86年に『アジャイル(機敏な)スクラム』という考え方を発表しました。日本の革新的な製品は、いろんな部署がラグビーのスクラムのように、専門性を生かし協働するプロジェクトを進めているという分析です。当時、米国では役割り分担を決め、定められた仕事をそれぞれが進める方式が主流でした」
  「それから四半世紀たってどうなったか。先端技術であるソフト開発の分野をみると、米国は日本のアジャイルスクラムを採用してさらに進化させていますが、日本は強み立ったはずのアジャイルスクラムを手放し、採用率は先進国で一番低くなった。日本は80年代に進んでいた道とは別の道を歩んでしまったのです」
・・・・日本企業再生のカギはどこにあるのでしょう。
  「知のダイバーシティー(多様性)を高め国境をまたぐことだと思います。1社限りの知識創造にとどまらず、グローバル企業同士で知の大同団結を実現すべきです。そこで欠かせないのは地を結集するプロデューサー的人材です。ホンダの本田宗一郎、ソニーの井深大、松下電器産業(現パナソニック)の松下幸之助は、いろんな人材を集めて知を結集し、プロジェクトを運営したプロデューサーだったといえます」
・・・低成長時代に入った日本で、そんな人物が育ちますか。
  「イノベーションはトップダウンだけでは生まれません。トップは壮大なビジョンを掲げる。現場には現実がある。両者を旨く組み合わせることで新しい価値が生まれます。その仲介役は、どこにどんな人材が居るのか現場を熟知しているミドル(中間管理職)です。トップが彼らに人事権を与え、優秀な人材を集めてプロジェクトチームを組ませる。後は退路を断って目標に突き進む。実際、ミドルを活用したプロジェクトチームが成果をあげ始めています。ダイハツ工業の軽乗用車『ミライース』のヒットが好例です」
  「プロジェクトチームでプロデューサー的な役割りを身につけたミドルを今度は組織の中核に配置し、やがてトップに引き上げる。そうやって現場とトップをつなぎ、知を継承するダイナミックな人事で、第2、第3の本田さんや井深さんを育てていく。日本企業は欧米と違ってレイオフ(一時解雇)や、過激な人材の総入れ替えはなじみません。社内の人材を徹底的に生かす知の構造改革を断行するしかないのです」


'12.9.1.朝日新聞・一橋名誉教授・野中 郁次郎さん

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