散歩道<4698>

                           経済気象台(698)政策の舵取り

 欧州の金融危機への対応が後手に回り続ける背景として、野村総合研究所のリチャード・クー首席研究員は、バブルの崩壊過程で生じる過剰債務による「バランスシート不況」という受け止め方が当局者にかけていると説明している。日本の経験からも、バランスシート不況の中で金融政策が無力になった状態は財政の出番で、公共投資や投資減税が有効であるのに、現実には財政規律の声の方が強いという。
 ギリシャの場合は、財政が全くの手詰まりでその道はないのだが、体力のあるドイツまでが財政規律を重視している。このため金融面からのてこ入れにも慎重で、EU全体が危機を深めている。
 今の日本も、財政の健全化が最優先という考え方が強い。このため、デフレ脱却のための公共投資という積極的な発想は塞がれ、デフレのまま財政は更に悪化している。しかし、その舵取
(かじと)りは吟味し直すときに来ているのではないか。
 社会保障と税の一体改革の必要はよく分かる。だが、日本の経済が多年にわたり凋落
(ちょうらく)してきた状況を更に加速することの危うさを思えば、消費税の増税を小刻みにするなど実態経済に配慮する必要がある。日本の貯蓄の構造からすれば相続税の徴収幅を広げ、全体的な税収を上げる道もある。
 財政の健全化と経済の活性化を対立させるのではなく、この閉塞
(へいそく)感を打ち破り希望ある国づくりをするために、日本の実態に即した政策を主体的に選択するのが政治の役割りだろう。
 国民の貯蓄という土台があり、技術や労働の質も高い日本が、世界の地殻変動という好機の中で停滞し続けたのは何が原因なのか、政策の選択が今問われてている。

'11.12.10. 朝日新聞

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