散歩道<4696>
経済気象台(696)・智者惑わず、勇者恐れず
1990年代、ニュヨーク 近郊に住んでいた頃、納屋で地場野菜や果物を売る店に日本産リンゴの「フジ」が並び、美味が評判になり、予約販売になってしまった。ふじの登場は日本の米国産チェリー輸入解禁の見返りだという話で、今は米国内で生産されるほどだ。
同じ頃、マンハッタンでは神戸牛の霜降り肉を大理石(マーブル)模様に見立てたコーベ・マーブル・ビーフを1枚150jで出すレストランがグルメ族を驚かせた。ミユジカルの特等席が50jの時代だ。これも米国産牛肉の対日輸出増の引当に米国が輸入を認めたもので、和牛は今も米国の高級レストラン御用達で伸びている。
野田首相はTPP交渉参加を表明したが、反対論者が叫ぶほど日本の農業はもろくない。バナナに始まる輸入果物の自由化にへこたれず、大騒ぎしたオレンジでも、日本のミカンは健在だ。「コメは違う」と言うが、コシヒカリのおむすびがコンビニで売られる国だ。日本産米にかなうものはない。
公的医療保険制度の自由化も警戒されている。しかし、米政府は90年代から日本の国民皆保険制度を模範として改革を図り、ようやく昨春、10年間で3千万人以上の無保険者を解消するオバマ米大統領公約の医療保険改革法が成立した。だから日本の医療制度の解体を米側がもくろむとは思えない。
高名な大病院の内科部長に聞くと、手術例で80万円かかる手術資材が 輸入自由化されれば30万円で済むという。医療費を抑制し、財政赤字改善を期待できる側面もある。
「智者惑わず、勇者恐れず」。まずは日本は先進工業国として臆することなく交渉の座に着くべきだ。
'11.12.10. 朝日新聞
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