散歩道<4694>
経済気象台(694)・虚構の成れの果て
欧州の危機が深まっている。イタリアの長期国債の金利は、危機水準といわれる7%に達した。不安はフランスやドイツにも及び、ドイツ国債入札は不調に終わった。
問題は欧州にとどまらない。米国では、財政赤字削減を巡る超党派協議が決裂した。IMFは最近の報告書で、日本の財政赤字に対する史上の不安が突然高まって長期金利が上昇し、内外経済に悪影響が及ぶ懸念を表明した。新興国ではインフラや資産価格の下落を背景に、持続成長への懸念が高まっている。
市場は、世界の全てを不安視しているかのようだ。世界の経済や金融市場の連結が重層化・複雑化する中で、金融不安は自己増殖的に広がってる。日本など経常黒字国は聖域であるといった解説が、いかに世間知らずの論理であったか、改めて思い知らされる。
危機はここまで広がってしまったのか。その淵源(えんげん)の一つが、許容限度を超えた財政赤字を正当化した虚構の論理だったのではないか。
金融のグローバル化や自由化の下で、資金はいくらでも入ってくるとうそぶき、財政赤字を増やし続けた米国。最後はドイツが救済してくれるというモラルハザードを生んだユーロ圏。潤沢な国内貯蓄と国債の高い国内保有比率を好都合な言い訳にして、過大な財政赤字から目をそらし続けてきた日本。そして、そのような虚構をまことしやかに宣伝してきたエコノミストたち。
危機のスパイラルを止めるための緊急避難策は必要だ。しかし、その後に来るのは、景気回復ではなく、公的債務の清算と経済再建への苦しい努力、そして長い景気停滞ではないか。それが虚構の成れの果てだ。
'11.12.2. 朝日新聞
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