散歩道<4687>
                           
                               経済気象台(687)
G7の没落

 巨大な人口を有するBRICSを筆頭に、途上国が著しい発展を遂げてきた。途上国では「成長の経済」という要因が働く。つまり、若く、安価な労働者を雇用できるので、企業や国家の負担は少なくないうえ、国民は年々所得が向上し、需要が拡大する。この結果、持続的な経済発展が実現してきた。
 逆に、先進国では「衰退の経済」というべき要因が働く。高齢化する社員の福利厚生費が増大し、国の社会保障費が膨張する。裕福な国民の需要は伸びず低成長が続き、政府支出による需要創出への依存を高めていく。この結果、国家債務は制御不能なレベルに達する。これに反比例して政治は劣化する。
 欧州は成長のために周辺諸国のEU参加を推進してきた。だが、PIIGSと呼ばれる国の放漫財政によって、苦境に追いやられてしまった。
 英国政府はこの悪循環を脱すべく、大規模な歳出削減と増税実施した。これが貧困層や若者の怒りを買い、瞬く間に主要都市が無防備では外出できない不穏都市と化した。
 米国は、ドルをばらまくことで消費熱を高めてきた。若く優秀な海外の労働力を受入れ、ITを主とする技術革新を推進し、成長戦略を実行してきた。だが、9・11後のアフガン、イラク進攻や、リーマン・ショックによる金融支援や大企業救済は借金経済を土壇場まで追いやり、大きく威信を揺るがした。
 ブッシュ前大統領の愚かな戦争から始まった21世紀。この尊大な覇権国を筆頭とするG7の没落と、国家権力と大企業が一体となってグローバル市場に乗り出している人口大国の台頭という覇者の交代劇は、今後も加速していくのだろう。

'11.9.9. 朝日新聞

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