散歩道<4670> 
                       仕事人・素の自分が分かれば、折れない(4)                 (1)〜(4)続く
                           日本人の感性を外から見よう

伝えにくい日本のアンバランスの美
 身につけるものを通してメッセージを届けている。私は自分のファッション仕事をそう考えています。言葉では伝えられない日本人である私自身がもつオリジナルな美を、日本語でも何語でもない言葉で伝え、会話しているのです。
 でも、日本の優れた文化や深い感性は伝えにくい。その典型的な例は音楽
*3だと思います。西洋音楽には楽譜がありますから、例えばインターネットで探せば手に入るし、店頭で買うことも出来ます。それを自分の表現に出来るかどうかは別の問題ですが、それでも楽譜はマニアルの一つとして完成しています。一方、日本の長唄などは、ひたすらリズムや間をお師匠さんから学ぶ方法が主流なのです。人から人、一対一という伝え方なのです。
 
西洋の音楽が「横に大きく広がる」のに対して、日本の音楽や伝統は「縦に受けつがれる」。あまりにも外との接点が作りにくいのです。
 日本の華道は、花や木の持つ自然の風情を写すことを美とし、書道も文字が整然と書ければいいとうわけではありません、日本の美は、アンバランスな「余白の美」*1だからだと思います。外国人から、上達するための方法論を聞かれても、言葉にして明確には答えられない。
 バランス*2感覚というのは5対5では身動きが取れないのです、安定しすぎて。私たち日本人が持っているバランス感覚は、3対7とか4対6とかであり、不安定な中に自分なりの安定を見つけ出す美学なのですね。誰も特に意識はしていないけれど、左右対称じゃつまらないという感性を日本人は秘めています。両手の働きもそうですが、右利きの人が9割右手を使おうとしても、1割の左手の働きが物を言う、そのバランスは一人ひとり違っても当たり前だと思います

若い人はこれから文化の発信の担える
 何か奥深く、面白いものをもっていそうな日本という印象は、国際的にも知られつつあります。また海外へ出て行った若い人が日本に強い関心を持つことも多くなってきました。東京の真中で育った私の息子も、ロンドンの「大学へ行ってから、日本の庭とか文化が明らかに他の国とは違うことに気ずいたようです。日本について考えなかった若い人が、海外に出て自分の国の素晴らしさを知る機会が増えてきています。やっと、その時代が来たのだと感じますね。
 追いつき追い越せと、長い年月を十分に外国から学んできましたが、今まで余り外に伝えてこなかった、伝えるのが難しかった日本の文化や完成を、これから若い人が発信していって欲しい。日本の漫画やアニメーションが大変な人気を集めているのは、一時的なものでも、偶然でもないと思います。貯金していた日本人の感性がメッセージを持っていたということです。
 衣食住の全てのライフスタイルにおいて、日本はもう発信するポジションに成りました。若い人はとにかく一度外から日本を見てください。空気のようになじんで意識しなかった、文化やファッション、日常のさまざまな美しさが外にはないことを実感できるはずです。「素の日本」を知ればやるべき仕事が見えてくるのではないかと思います

'11.11.6〜'11.11.27.朝日新聞 ファッションデザイナー・コシノジュンコ
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