散歩道<4668>
仕事人・素の自分が分かれば、折れない(2) (1)〜(4)続く
センスとは、状況判断である
磨くことが出来る能力
ファッションの仕事で生き残っていく為には勿論のことどのような仕事であってもセンスがなければ頭角を表すことはできないと思います。このセンスという言葉ファッション業界で使われる頻度が多い為おしゃれなことと誤解されがちですが、実はサッカーのようなスポーツでも使われる用語です。ボールの来る方向を予測して、どちらの足でどう蹴るか、今まで積み重ねた経験と訓練によって状況判断が出来、全てがかみ合ってシュートを入れられる人に対して、センスがいいというのです。
センスは四つの意味を含んでいると思います。「感覚的」「経験がある」、それについての「知識を持っている」。そして瞬時にどうすべきかの「状況判断が出来る」。経験があることは特に大切で、子供のときの無邪気な体験はもちろん、見知らぬ土地へ行った、美しい物を見た、何かを壊した、手痛い失敗をしたというようなさまざまな体験の預金があること。そしてその体験を知識で定着させることですね。
ファッションデザイナーである私は、新しい体験をする為に地球のどこへでも出かけますが、手に触れた物が何で出来ているか、今見たダンスがなぜ感動したのか、どんなことでも自分のセンサーにかかったら捕まえて私のセンスの引き出しに蓄えているのです。意識してそれを続けることです。例えば初めて営業に来た銀行マンでもセンスがあるとピンときたら私は話を聞いてみます。その人なりに努力をしていて、それを状況に応じて使いこなせる魅力が伝わってくるくるかどうかなのです。
キューバ大使夫人の忘れえぬセンス
長くおつき合いのあるキューバ共和国から、今度私は勲章を頂くことに成ったのですが、在日キューバ大使夫人からもプレゼントを受け取りました。私が頂いたプレゼントは見たこともない美しい銀のブレスレットでした。
それがよく見ると食卓で使うフォークなのです。そのフォークをくるくるねじって女性の腕にフイットする、アーティストがつくったアート感覚あふれるアクセサリーを私に贈って下さった。本当に喜びと驚きを感じました。贈るべきものも、予算もないであろう、そんな中で大使夫人が考えついたクリエーション私の職業は勿論アクセサリーも数多く発表しているファッションデザイナーなのですよ(笑い)。その私に、一国の大使夫人として贈る品に込められた、感謝と愛情と、そして祖国の現状への思いが痛いほど伝わってきました。
状況判断が出来、美しいものを知っていて、それを形にする心と技を持っている。そのセンスは素晴らしいという以外にありません。多くの困難を体験していらっしゃったのと思います。それでも虚勢を張ったり、何かで間に合わせたりするのではなく、その時、その場で伝えるべき魂を知っていることのすごさ。センスとは、つまり見た目がどうこうというのではなく、人間の総合力なのです。
'11.11.6〜'11.11.27.朝日新聞 ファッションデザイナー・コシノ*1ジュンコ
関連記事:散歩道<検>氏名・*1こしの綾子235,1024-8、<検>文化、<検>言葉・「いき」