散歩道<4645>
                          文化・音楽評論、原点を見つめ直す(2)                       (1)〜(3)続く
                              社会と接点探る動き盛ん

試行錯誤たどる
 
 復刻を企画したのは「日本の合唱史」などの著書がある音楽史研究者の戸ノ下達也さん。「音楽と社会が豊かなダイナミズムをもっていた時代の息吹が、リアルに伝わってくる。信時潔の『海行かば』*1のように、社会情勢により不当に蔑
(さげす)まれていた名曲の魅力に、再び光を当てる一翼にできれば」と語る。
 音楽会の風雲児、兼常清佐
(かねつねきよすけ)(1885-1957)の全貌を振り返る著作集(全15巻・別巻、大空社)も昨年完結した。「ピアニスト無用論」では、タッチの違いによる音色の差異など、マニアックな指摘を並べた演奏評をナンセンスと喝破。「パデレウスキーが叩(たた)いても、猫が上を歩いても、同じ鍵盤からは同じ音しか出ない」と言い放った。
 著作集編集に携わった日本音楽研究者の蒲生美津子さんは「重箱の隅をつつく評論の演奏家を萎縮させ、音楽業界を閉塞
(へいそく)させると兼常は感じていた。言葉こそ乱暴だが、大衆と音楽の現場の絆を必死で守ろうとしていたように映る」と言う。
 音楽評論家の片山社秀さんはこう語る。「日本人は、自分たちの間尺に合わせつつ『娯楽』として西洋音楽を受け入れてきた。その筆頭が浅草オペラ。しかし戦後、クラシックは世界と対峙
(たいじ)し、尊敬されるための『教養』*2になる。そのために音楽評論家が必要とされた」

'11.11.29.朝日新聞・吉田 純子さん

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