散歩道<4634>
                         
インタビユー・オピニオン・資本主義経済よ、どこ
(2)        (1)〜(6)続
                    宿命のバブル崩壊 財政は赤字に傾く 完璧な処方箋はない  

・・・金融市場の暴力も、資本主義が抱える病理の一つですね。
  「金融市場のメカニズムは宿命的にバブルが起きやすい。いつか破裂するとわかっていても、みんな急いでバスに飛び乗る。しかもそれが実体経済を振り回している。米政府が高リスク金融取引の規制に乗り出したが、効き目は薄いと見られています。ちょっとでも隙を見て大もうけをしてやろうという人間は、そう簡単に消えない。ただ全ての国民がそうなれば国は滅びるが、そういう人々が一部にいるから社会が活性化するという面も無視できません」
・・・市場はそう紳士的な装置ではないと覚悟すべきなのですか。
  「輸入学問の経済を学んできた我々経済学者は、理念型としての『市場』への崇拝の念がちょっと強すぎるんです。すばらしい機能をもつ市場に任すべきだ、市場の声を聞くべきだと。しかし実際の市場はいい点も悪い点もある。取引の対象ごとにうまくデザインしないといけない。たとえば、需要が期待できる毛はえ薬やED治療薬はいくらでも開発されるが、患者数が少ない難病の薬はすぐに市場に出ない。巨費を投じて開発してももうからないからです。本当は、それでも命を救う難病薬開発に挑むのが医療の務めのはずです」
・・・「純粋な市場なら、うまくいく」と主張する学者もいます。
  「とんでもない。たとえば電力市場で言えば、たしかに今の電力会社の統治に問題はあります。しかし発送電分離で自由化すればスポットの市場原理が働くからいい、という意見には賛成しかねる。長期契約を一部に組み込まないと安定供給が危うくなるからです。今は電力会社の現場の人たちが停電させまいと、ものすごい努力をしている。それを無視して市場にぽんと放り出すだけでは、恐ろしいことになりかねない」
・・・新古典派もケインズ経済学も経済危機にあまり無力では。
  「経済理論は文法のようなもの。英語の文法を丸暗記しただけで生きた英語は使えません。経済理論は筋道を立てて説明するのに便利だが、現実社会に起きる、極めて複雑な現象をすべて解決できる完璧
(かんぺき)な処方箋は描けません。きっと将来も」

'11.11.8.朝日新聞国際文化研究センター所長・*1猪木 武徳さん

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氏名・*1猪木 武徳氏2304,2546,<検>政治、<検>外国、<検>社説、