散歩道<4617> 

                    オピニオン・耕論・ダブル増税 大義あるか(1)
                              デフレ不況下に無謀だ
                                 (1)〜(2)続く

 復興財源は、増税せずに、償還期間の長い復興債を発行して全部を賄うべきだ。デフレ不況で需要不足が続き、雇用も十分でない。デフレで円の価値が上がって超円高になり、そこに大震災が起きて、誰もが将来への不安で消費を控えている。さらに欧州発の経済危機。この状況で増税するのは無謀だ。
 増税は需要を抑制する。人々は金を使わなくなり、さらに経済が悪化する。税率を上げても、経済が悪くなればかえって税収はおちる。1997年に消費税率を上げたときも、一時は税収は増えたが、翌年から全体の税収は落ち込んだ。政府・与党案が所得税の増税を2013年からにしたのはわずかな救いだが、将来の増税がわかれば消費者は今から節約するだろう。
 国債発行は将来の世代にツケを回すという人がいるが、間違いだ。国債を国民が保有していれば、将来の世代は国債の利払いと償還のために税金を納めるが、一方で国債の利子と償還金を受け取るので、それだけでは負担にならない。
 負担になるのは、国債発行によって、増税した時よりも実質金利が上がる場合だ。民間の設備投資が抑制され、円高で輸出も減るので、将来世代に残す実物資産や対外資産が減る。だが今はデフレ不況で投資需要が少なく、すぐ実質金利が上がる状況ではない。デフレ脱却で経済が拡大し、需要が供給能力に追いつけば実質金利は上がるが、税収も増えるので、その時、国債の償還を早めればいい。

'11.10.12. 朝日新聞・学習院大教授・岩田規久男氏


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