散歩道<4616>
オピニオン・耕論・ダブル増税 大義あるか(2)
財政至上主義に陥るな (1)〜(2)続く
一方、政府が進める「社会保障と税の一体改革」については、本来あるべき税制の抜本改革の一部であり、全体では増税をもっとバランスのとれた内容にすべきだ。
政府税制調査会の専門家委員会が昨年出した報告では、経済的に力の強い人が多くを負担する税の所得再分配機能」を回復させることが税収増とともに重要と指摘した。そのうえで、所得税と消費税を「車の両輪」として税制の抜本改革に取り組むよう提案したのだった。
それに比べ、一体改革成案は消費増税に偏っている。生活保護を含む社会保障の全体についても、税制の抜本改革とともに検討を深めねばならない。
民主党政権は、財政至上主義に陥ってはならない。専門家委員会の報告で述べたように、財政再建と経済成長を両立させるためには社会保障を強化し、人々が安心して新しいことに挑戦できる社会にすることが欠かせない。
つまり、社会保障の安定・充実を土台に、新たな産業を生み出すための構造改革を進めることこそが大切なのだ。
そうした改革の方向性についての基本を踏まえたうえで、次の世代のために、私たちが財源をどう負担すべきかをよく考えなくてはいけない。
所得税を消費税とともに重視すれば所得再分配機能の回復を期待できるし、それが「強い社会保障」を通じて「強い経済」につながってゆく。
財政赤字を減らしさえすればよいという議論と同様に、成長さえすればいいという主張も一面的だ。どうやって新しい成長を実現するかという肝心の課題に答えようとしていない。
'11.10.12. 朝日新聞・東京大名誉教授・神野直彦氏
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