散歩道<4596>
オピニオン・あすを探る・外交
専門知を結ぶシステムを(3) (1)〜(3)続く
個人が専門家と総合的判断者を兼ねることが無理なのであれば、システムでそれ行うしかない。言ってみればそれは、患者ひとりを内科、外科、神経科など複数の医師が診て、総合的に病気を判断する。総合病院的なシステムだ。ある特定の事象について、個々の専門家の知識を俯瞰(ふかん)して総合的判断を示すようなシステムが、少なくとも社会科学にはない。
9・11の犯人たちの政治思想やそれを生んだ国際関係を政治学者が論じ、社会的背景を社会学者が、犯罪に至る心理を心理学者が議論する。出身国の貧困が事件に関係するとすれば、経済や農学、都市工学などの専門家が、その解決方法を考える。
そんな恒常的な学際的共同研究の場からこそ、同様の問題の発生を予防する糸口が見つかるのではないか。9・11と3・11の間にアナロジーを診るとすれば、実はそこである。3・11後の対応でも、分野の専門家の意見が、ただ言いっぱなしで個別に消費されているだけでに見える。
研究者が個々の専門知の多様性を活かしながら、同じ問題意識を共有して、戦争や災害など生活を根幹から壊す事件に対処する。そこで生まれた知は、広く社会の誰もが利用できる。そんなシステムの重要性を再認識するために、もう一度大惨事が必要にならないことを願う。
'11.9.29.朝日新聞・東京外国語大学教授・酒井 啓子さん
関連記事:散歩道<検>戦争、<検>災害、<249>開発研究・防災研究、・基礎部分・産学連携を模索、<250>研究開発成果の発表と貢献、<4377>オピニオン・原子力村、
![]()