散歩道<4587>

                             組織の読み筋 カリスマ退場 
                                
残すべき「資産」は社外にも(3)   
                           (1)〜(4)続く

 ○ ○
  
 優れた副官が冷静な分析により体系化・制度化でもしなければ、「半歩先を読む組織」も、後継者教育も簡単にはできない。強烈な個性のカリスマの場合、この種の優れた副官と訣別してしまうケースも多いので、こうした方法も期待薄だ。
 それならカリスマが職場での実地訓練(OJT)で手本で見せれば良いと思われるかもしれないが、これもまた難しい。最後まで細かいことに口を挟み続けるカリスマが、実は部下たちの思考力を奪っていく可能性があるからである。

 他者には見えない未来の「正解」を一人だけ「知って」いるカリスマなのだから、ただでさえ部下たちは「お言葉」を待つ受け身の姿勢になりがちである。そのカリスマが事細かに手本を見せ始めれば、部下たちが思考の主体性を失っていっても不思議ではない。
 しかも、その対話の中で、視線は自然にカリスマそのものに向かい、本来向くべき市場や顧客から意識が離れていく。カリスマがあまりにも魅力的であるがゆえに、共に市場を読むのではなく、その人だけに注意が向かい、市場よりもカリスマの期限を読むようになる場合もある。これでは未来を先取りする能力を受けつぐことはできない。
 後継者育成や組織による継承がうまくいかなければ、新製品を構想するカリスマの力量は、その人物の人生と共に消え去るか、薄れていく。カリスマの引退は、企業経営を根幹から考え直さなければならない深刻な転換点となるのである。

'11.10.21.朝日新聞 ・一橋大・教授・*1沼上 幹氏


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