散歩道<4568>

                             経済気象台(684)就職活動による経済的損失

 文部科学省の調査では、今春の大学卒業者の「うちほぼ6人に1人が定職についていない。3年生の秋から就職活動を開始することを考えると、未就職者の置かれた状況は悲惨である。この大学は「就職斡旋(あっせん)業者」としての性格を強め、それが大学評価の最も重要な指標ともなる。
 この背景には、企業の採用担当者は「早く動き出さないと優秀な人材が採れない」と考え、学生側も「早く始めないと行きたい会社に入れない」と、両者の危機感の悪い意味での均衡がある。
 ここまで学業がおろそかになると、何のために我々は「学費」を支払っているのか、という疑問が生じる。教養と深遠な専門知識を学ぶための費用として、親や学生本人が苦労してひねり出しているはずだ。
 就活の長期化で約1年半、つまり1人当り150万円程度が無駄に支払われる。不経済そのもので、我々が被っている社会的損失だ。そして、金銭だけでなく、学生に学費に見合った専門知識を学ばせたい意欲の高い教員ほどやる気を失っていくという。
 よく言われることだが、わが国の消費者の高い品質要求が、製品の向上に大きく貢献した。ところが企業は、大学に専門教育を期待せず自社で教育するとうそぶく。企業は、能力やスキルを持った人材はいらないのだろうか。要は、単に自分の能力を基準にし、自分を超えない程度の都合のよい人材を求めているだけなのか。
 大手商社7社が昨年、経団連に採用活動開始を4年生の4月以降にするように要請した。この動きのように、企業側の無秩序ぶりは改善されるべきで、大学側に専門教育の品質向上をもっと求めるべきだ。

'11.9.2.朝日新聞

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