散歩道<4567>

                             経済気象台(683)・「目的」と「結果」

 金持ちになる。偉くなる。有名になる。
 これらは人生の「目的ではなく」、「結果」である。金持ちになったり、偉くなったり、有名になったりしても、それはラッキーな「結果」なのだ。それなのに、いまの世の中、目的と結果を取り違えている人がなんと多いことか。
 思春期から青春という、人生でもっとも輝かしい時。小学生も、中学生も、高校生も「一流校」を目指して勉強一筋だ。親たちも「有名校」への入学こそが、我が子の人生の第一歩と考える。
 大学に入学しても流れは変わらない。今度は「有名企業」への就職活動にいそしむ。
 目先の目的ばかりに気をとられていると、どんな結果を生むか。純粋な心を育むはずの学校でいじめや自殺、ひいては殺人が起こる。「テストの点数が人間の全て」という考え方が、知らず知らずに子供の心にはびこってくることが背景にあるのではないか。
 目的と結果の取り違いに気づかないまま、大人になってしまうと、もっと不幸な結果を生むことになる。「勝つこと」だけを目的にドーピングを行い、競技後にばれて金メダルを剥奪
(はくだつ)された五輪選手。
 「金儲け」だけを目的にビジネスを始め、成功はしたものの尊敬されない経営者。
 「首相になる」ことが目的で首相になったものの、何をしてよいか解らない政治家。
 勝者も、敗者も、成功者も、落後者も、同じだ。夢いっぱいだった人生が、暗くて寂しいものに変わる。
 大地震と原発事故でこれまでの日本の常識は覆された。今こそ、教育や社会、企業のあり方、そして日本人としての価値観を基本から考え直す時ではないか。

'11.9.2.朝日新聞

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