散歩道<4559>
経済気象台(680)・円高の本当の理由と新首相
円が戦後最高値を更新し、空洞化を懸念する声も強まっている。円高の理由をエコノミストやメディアはつぎのように解説する。欧米経済が再び悪化し、財政危機も高まっていることから、世界の資金が豊富な対外資産を有し安全と目される円に集まっている。
しかし、この説明はうさん臭い。日本の実質経済成長率は3四半期連続でマイナスで、欧米よりも低い。復興需要で一時的に盛り返しても、その後、景気は尻すぼみになる可能性が高い。何より日本経済は20年に及ぶ長期低迷から脱していない。
財政事情は欧米よりはるかに厳しく、国債の格付けも低い。カナダなど対外赤字を抱える国の通貨も上昇しているから、対外資産が重要な要素とは思わない。
では、どうして円が買われているのか、金融危機後、不確実性の高まりに備えて、投資家が積み上げてきた大量の流動性資金が、新たな危機におびえて、より安全そうに見える資産にあわてて駆け込み、それがたまたま円に向ったということではないか。格下げされた米国債が引き続き買われといるのも、同じ理由からだろう。
つまり、円高を引き起こしたのは、不確実性の高まりに対する投資家のおびえやパニックということだ。もし、景気停滞や財政悪化という円のリスク、他により安全そうな資産が意識されれば、資金は容易に円を離れる。
新首相になる野田佳彦氏には、このような不確実な世界の現実を強く認識してほしい。日本経済の存立基盤を一刻も早く確立しなければ、日本は翻弄(ほんろう)され続ける。内輪もめや、選挙目当てのバラマキに時間と金を使う余裕などないはずだ。