散歩道<4557>
経済気象台(678)・購買力平価で為替を見る
購買力平価(PPP)をご存じだろうか。
1918年にスエーデンのグスタフ・カッセルが、為替レートを論じる際に初めて使用した用語である。二国間の貿易財において一物一価の法則が貫徹するように長期的な為替レート水準は決る。同じ製品なら同じ値段になるように為替レートは決っていく。重要な点は「貿易財において」と「長期的」というところである。今日、明日の為替ではないし、貿易の対象となる自動車には成立するが、貿易されないタクシー料金では成立しない。
先般1ドル=70円台に突入し、戦後最高値を更新した。これはPPPではどのように評価できるのだろうか、トヨタ・カムリで比較してみよう。アメリカで最も安い希望小売価格は約2万1千j強で、日本では250万円である。計算するとPPPによる為替レートは1ドル=119円程である。細かい仕様や装備には差はあるだろうし、競争状況も異なるから、この計算だけでレートを決定することは出来ない。しかし現在の為替水準は、最も競争力のある自動車産業から見ても、大変苦しい円高であることは確かに解る。
それにも関わらず、どうしてこんなに円高になるのか。個別の製品ではなくマクロレベルで計算した数値を見るとそのことが判明する。日本の為替レートは、90年代をとおして輸出物価ベースのPPPにほぼ一致して変動していた。今世紀になってそこから乖離(かいり)し、円安方向で推移していたのである。ただ、現時点での輸出物価ベースで計算してみると、なんと60円台の水準となる。今のところ50円台のレート予測は根拠のないたわ言に過ぎないが、60円台は必ずしも否定できない。