散歩道<4552>
経済気象台(673)・袋小路にはまった米国
米国の債務上限引き上げ問題が決着し、10年間で2兆j強の財政赤字削減策が決った。デフォルトは避けられ、国債を格下げしたのもS&Pだけだった。しかし、当面の危機回避の代償として、米国経済を抜け出すことが困難な袋小路に追いやってしまった。
まず、赤字削減が続くため、景気原則と雇用低迷に対し、財政からの刺激策を実施することが難しくなった。このため景気の二番底に対する懸念が強まっている。景気が悪化すれば、税収減で赤字は逆に増える。
次に、赤字の主因だった社会保障支出の削減や富裕層減税の停止には政治的な抵抗が強く、しわ寄せが教育や研究開発、インフラ投資に及びかねない。これで中長期的な成長基盤が損なわれ、財政も悪化する。
一方で、2兆j程度の赤字削減では、政府債務残高の膨張に歯止めをかけることは難しく、4兆jの削減が必要との指摘もある。その結果、公的債務はいずれ上限に近づく。財政規律の維持も困難となり、たがてインフレやドル安、金利上昇を引き起こす。つまり米国経済は、財政赤字・公的債務と経済成長のトレードオフ、悪循環に入り込んでしまったわけである。
そこから、どうやって抜け出すか。教科書的な処方箋(せん)は、ドル安による輸出拡大だが、世界経済も不安定化・減速しており、輸出主導の景気回復は難しい。残された手段は、社会保障の削減や増税を大胆に行い、そこで生まれた歳出拡大余地を景気対策に回すことである。
つまり、政治家が不人気な政策を落選覚悟で断固として行うことでしか、米国経済は袋小路から抜け出せないのだ。どこかの国の政治家にも聞かせてやりたい話だ。
11.8.11・朝日新聞
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