散歩道<4551>    

                         経済気象台(672)デミング博士の4M

 JR西日本の日勤教育の違法性が大阪地検で認定された。日勤教育の本来の目的は、現場のモチベーションを高め安全・正確な業務運営に生かすことだ。現実には、遅刻などのささいなミスに上司が暴言を浴びせるなど目的とは、対極的な実態だった。
 ヒトはほめられれば目標以上の成果をあげるが。叱責
(しっせき)によっては最小限のノルマしか達成しなくなる。逆に、叱る上司はその行動がエスカレートしやすく、いじめとなる。結果、部下は意欲や忠誠心を失い、上司は無能化が進んで組織は荒廃する。
 品質管理の権威であった米のデミング博士は、製品のバラツキの要素として、マテリアル(材料)、マシナリー(機械)、メソッド(方法)、マン(ヒト)という四つのMを挙げている。日本の製造の現場では、最初の三つの合理化を極限まで進め、品質管理の高度化に成功した。
 だが、企業にとって、ヒトや労働の管理は難しい。ヘンリー・フォードは「両手だけがほしいのに、なぜ頭までついてくるのか」と独特な表現でこれを嘆いた。  JR西日本はまた、前社長がカーブに自動停止装置をつけなかったとして宝塚線の事故で刑事責任を問われた。これを見ると、JR西はヒトに冷酷なだけでなく、マシナリーやメソッドをも軽視していた可能性がある。
 仮に経営者がこのような稚拙な人事管理や必要な投資の抑制に深く関与していれば、これは女工哀史レベルの経営だ。黙認か放置していれば、上申に甘く部下に過酷な貴族経営、知らないのであれば経営不在といえる。
 ヒト以外にめぼしい資源を持たない我が国は、ヒトの活性化によってのみ復活が可能となろう。

11.8.5.・朝日新聞 

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