散歩道<.4527>
記者有論・ドル没落(2) (1)〜(2)
世界通貨の創出を語ろう
2度の世界大戦の間にドルとポンドが並び立ったように、基軸通貨が複数になることも考えられなくはない。だが、ノーベル賞経済学者のジョセフ・スティグリッツ教授(米コロンビア大)は、それは「より不安定なシステムになってしまう」と説く。
同教授はリーマン・ショックの直後、米国とドルの将来不安が高まった08年秋に筆者のインタビューに対し「結局のところ、特定の通貨に依存しないグローバル紙幣が必要だ」と、新たな世界通貨の創出を語っていた。
この考えは09年、国連が慰問した専門家委員会による「スティグリッツ報告」に盛り込まれた。国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)を発展させ、主要通貨のバスケット(加重平均)などで世界共通の通貨創出を求める内容だ。
戦後の世界経済体制を決めた1944年のブレトンウッズ会議で英国代表をつとめたケインズが提唱した「バンコール」の現代版といえる。
基軸通貨の特権を守りたい米国の賛同は難しい。だが世界銀行のゼーリック総裁も昨秋、英紙フィナンシアル・タイムズへの寄稿で「ドル、ユーロ、円、ポンド、人民元を含む新通貨システム」の構想を20ヶ国・地域(G20)の首脳らが討議するよう提案した。こうした議論を今こそ進めるべきではないか。
目先の対策として、協調介入などで為替相場の乱高下を抑える努力も必要である。しかし、抜本的な改革に挑まない限り為替と世界経済の動乱の時代は終わらず、雇用も生活も脅かされ続ける。
'11.8.13.朝日新聞・編集委員・小此木 潔氏
関連記事:散歩道<検>政治、<検>社説、<検>言葉・サブプライム・ローン、