散歩道<4518> 

                           美の季想・マスターピースと「名物」(1)              (1)〜(3)続く
                             
日本の傑作 根底に「観賞の美学」

 今からひと昔以上も前、1997年9月、イギリスのノリッジにあるイーストアングリア大学で開催された「日本とヨーロッパ美術における傑作」と題するシンポジュームに招かれて、基調講演をしたことがあった。
 優れた美術作品というものは、日本にもイギリスにも、いくらでもあるが、それらの「傑作」を「傑作」たらしめているものは何か、平たく言えば、ある作品が「傑作」と認められるのはどのような理由によるものか、そこにそれぞれの国の歴史や文化がどうかかわっているかを議論しようという趣旨のシンポジュームである。私はそこで「マスターピースと『名物』・・芸術における価値の創出」と題して話をしたのだが、この題名については、多少の説明が必要であるかもしれない。
 英語の「マスターピースと」という言葉は、西洋中世における同業者組合の制度に由来する。当時、画家や彫刻家が社会的活動をするには、自分の技量を示す作品を組合に提出して承認を得なければならないという決まりがあった。一人前の親方(マスター)として認められるための作品(ピース)が「マスターピース」である。つまり「傑作」はあくまでも芸術家の優れた才能によって生み出される。その意味で、それは「創造の美学」と呼んでよいであろう。

'11.9.1.朝日新聞・美術史家・美術評論家・高階 秀爾氏

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