散歩道<4508>

                           時事小言・新たな核廃絶構想(3)                      (1)〜(3)続く
                             核に頼らぬ安定 探る時
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 米ロ軍縮の場合、米ソ冷戦の終結によってその目標は実現に近づいた。だが、東アジア、南アジア、中東では、国際紛争が現実につづいており、核抑止力と核の傘への期待がまだ残っている。新START後の核軍縮、いわば第2段階の軍縮は、それらの紛争に目を向けた上で、緊張緩和の手段として核軍縮を位置づける必要がある。これまで核軍縮に関心を示してこなかった中国やインドを巻き込んだ、多角的な緊張緩和と結びついた核軍縮の構想が求められるのである。
 難しい課題には違いがない。核軍縮が政府間交渉によって行われる以上、断固として核削減に応じない国家、たとえば北朝鮮に対して、交渉による軍縮の成果は期待できないからだ。だが、核戦争による共倒れを恐れる政府に対して、慎重な核削減によって核に頼らない平和への移行を求めることが不可能であるとは、私は思わない。そして、軍縮どころか軍拡の進む東アジアにおいて、新たな核兵器の配備を遅らせることができれば、それだけでも大きな成果だろう。
 湯崎英彦広島県知事の呼びかけによって、明石康元国連事務次長を中心として、このたび国際平和拠点ひろしま構想の策定が開始された。その構想に加わる一員として、核廃絶を現実の政策としてどのように実現できるのか、内外の識者とともに検討を進めてゆきたい。核兵器の削減を米ロ両国政府だけに委ねておくことはできない。


'11.7.20.朝日新聞・東京大学教授・藤原 帰一氏(国際政治学者)

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