散歩道<4509>
美術展・天竺へ・三蔵法師3万`の旅
'11.8.28.最終日に奈良国立博物館で美術展・天竺(てんじく)を観賞した。実に暑い日であったが、多くの人が見学に来ていた。玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)が生まれた時から、仏典を求めてインドに赴く決意をする、その道中の厳しさ、この旅の道中で、色々な人々(民族)との出会いや歓待、その違い等その様子が絵を通して我々に少し理解できるように作成されているように思う。牛車を引く牛、象であったり、この道中の運送手段である馬等、様々な様式の違う祭典も経験することにもなる。道中ではしょっちゅう山賊に会う、又*5砂漠の厳しさ、又雪道の天山越えでは人も馬も数多く亡くなる様子が絵から読み取れる。当時、特に食料などの物資の輸送は実に大変であったと想像できる。玄奘三蔵が学問を吸収しようとする強い信念や、講師から講義を受けるその前向きなその姿勢の様子が、一貫して描かれているように思う。
描写の仕方にも興味を覚える。人物の描き方が表情を微妙に捉えていることである。山々が延々と繋がる絵、海抜何千bと山には雲がその下に描がかれ、月が雲の上に描かれている。色は*1群緑、茶、橙、赤が主で群青は少ないのが目立つ。また小鳥や木は日本の江戸後期に描かれている手法とよく似ていると感じた。又、この道中が巻物としては190bに及ぶ長さのものを、1枚の円形の図(五天竺図)として捉えられた発想にも興味がある。当時、道中で彼が会ったとされる、仏足石(*2ギリシャのヘレニズム文化の影響を受けるまでは、仏像が人の姿で描かれることはなかった)の大きさ。又帰国後、持ち帰った莫大な資料を翻訳に、写経に多くの役人が関わっている姿が、彼が多くの功績を中国にもたらしたことを示す貴重な絵であると思った。
又、隣の展示室には藤田美術館が保存している国宝「大般若経」387巻の展示の多さには驚かされた。(これらは国宝4件、重要文化財13件に及ぶらしい)。これらが東アジア仏教史に多くの影響を与えたといわれている。又、現在も親しまれている「西遊記」の元(お供の孫悟空、猪八戒(ちょはっかい)、沙梧浄(さごじょう)などが妖怪どもを退治して玄奘を助ける物語)にもなっているといわれている。
これらの*3藤田邸宅に保管されていた資料は、昭和20年の*4大阪大空襲により家屋は焼失したが蔵が幸にも類焼をまぬがれたため、これらの資料がこの度のように皆に展示されることが出来たことは、実に喜ぶべきことである。
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