散歩道<4507>
時事小言・新たな核廃絶構想(2) (1)〜(3)続く
核に頼らぬ安定 探る時
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だが、いま進められている核軍縮によって核廃絶が期待できるとはいえない。そこには三つの問題が残されているからだ。
まず、現在の核軍縮は圧倒的に米ロ両国によるものに限られ、その両国ともに、他の核保有国に対する優位が保たれる限度のなかで核の削減を進めてきた。現在進められている核軍縮とは冷戦期に米ソ両国が蓄えた膨大な核弾頭を減らしているだけであって、核による安全保障という政策を両国が放棄したわけではない。
さらに、米ロ以外の核保有国では核削減の努力が見られない。イギリス、フランス、中国に加え、現在ではイスラエル、インド、パキスタン、そして北朝鮮と、核保有国の数は次第に増加してきた。米ロが核を減らす一方で米ロ以外の諸国が核を減らさないのであれば、米ロ両国の核削減への意欲は低下する。新STARTは大きな成果だが、その先の展望は見えない。
さらに、安全保障を核に頼る政策は核保有国に限ったことではない。核を持たない韓国や日本が、いわゆるアメリカの核の傘、すなわち核抑止力に頼る安全保障を続けてきたことは否定できない。核廃絶を求める日本は、同時に核新START抑止戦略に頼ってきたのである。
ではどうすればいいのか。核の傘あっての安全だ。核廃絶などという目標は日本の国益を損なうという主張があるだろう。抑止戦略そのものが間違っている、核兵器の災厄を世界に訴えることで各国政府を核廃絶へと追い込もうと唱える人もいるだろう。
私は、どちらの考えも採らない。核に頼る安全から脱却するためには、核に頼らなくても安全が保たれると各国政府、さらに各国国民が安心できる状況を作らなければならない。ここで必要なのは、核に頼る安定を、核廃絶を伴う安定へと切り替えてゆく試みである。
'11.7.20.朝日新聞・東京大学教授・藤原 帰一氏(国際政治学者)
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