散歩道<4502>

                           時事小言・大国の条件とは何か(3)                  (1)〜(3)続く
                               世界に関心を持ち続けてこそ

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 昔からそうだったわけではない。1980年代、石油危機からいち早く立ち直った日本では、海外における経済活動の拡大と併行して国際報道の拡充が続いた。日米関係と東アジアに偏る特徴は当時にも見られ、アフリカやラテンアメリカへの関心は高くはなかった。それでも、国外情勢を正確に知らなければ日本が成り立たないという感覚があったのも事実だろう日本の経済の世界化が、国際関心の拡大を招いたのである。
 だが、90年代の半ばから経済が失速し、企業も海外拠点を撤収してゆくと、国際情報への関心も衰えてしまった。かって世界一を記録したこともある海外への経済援助は減少に向った。自民党政権の不安定化、政権交代後の政情不安、さらに東日本大震災が、内政重視の報道姿勢をさらに強めてしまった。世界諸国から信頼を集めながら国外の情勢に関心の薄い日本が、こうして生まれる。
 軍事的にも経済的にも、現在の日本は世界の大国である。大国という地位は、自分の国だけでなく、現代世界の課題に取り組む責任を伴い、また責任を果たしてこそ大国として諸外国にも承認され、信頼を受けることができる。経済の衰えた日本は見向きもされない。みんな中国を向いているなどと愚痴をこぼす前に、我々がどれほど世界を知ろうとしているのか見つめ直す必要があるだろう。


'11.7.20.朝日新聞・東京大学・藤原 帰一氏

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