散歩道<4501>
                           時事小言・大国の条件とは何か(2)世界に関心を持ち続けてこそ         (1)〜(3)続く
         
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 さて日本はどうだろう。東日本大震災後に世界各国から寄せられた支援は日本への関心と共感が保たれていることを示している。戦後日本が、経済援助や人道支援を通じて築いてきた国際的な信頼の賜物
(たまもの)だろう。日本を仲間として受け入れる世界諸国が、日本の対外的な影響力を支えている。
 だがその日本では、世界を知ろうという関心が衰えているように思われてならない。
 7月9日、南スーダンが独立した。内戦によって膨大な人命の失われたスーダンで、南部が分離独立したのである。残念なことに日本ではこの事件の報道も少なかったが、その南スーダンのすぐそば、ソマリアを中心とするアフリカの角で干ばつが発生し、1千万人規模の人々の生命が危機に瀕していることは当初まるで報道されなかった。同じ時、イギリスのBBC、アメリカのCNN、ニューヨーク・タイムスなど日本国外の報道機関は、アフリカ東部の干ばつを繰り返し伝えていた。内外の報道の落差は明らかだ。
 アメリカやイギリスが偉いとか進んでいるとは必ずしも思わない。国境を越えた人道的責任と考えの裏には、国境を越えて政府が活動することを当然として受け入れる意識がある。ソマリア難民を自国の事件のように報道するBBCの態度には、人道的な関心ばかりでなく、世界の辺境を自国政府の関わるべき領域と見なす植民地帝国以来の大国意識が覗
(のぞ)いている。
 だが、その態度、自分の国で発生したわけではない事象に対しても関心を抱き、情報を収集し、何ができるのかを考える態度こそ、世界諸国を引き寄せる力を備えた大国の条件に他ならない。国外の情勢に無関心な国家は、どれほど軍隊や経済が強くても、国際政治において責任ある行動を取る大国としての信頼を得ることはできない。
 新聞でもテレビでも、現在の日本では国際報道の出番は少ない。伝えられるのは日米関係と東アジア、それも日本の政局と関わりに深い普天間基地問題などが圧倒的である。

'11.7.20.朝日新聞・東京大学・藤原 帰一氏

散歩道<検>氏名・藤原 帰一氏788.1155.1722.4297.4342,4446,<検>政治、<検>社説