散歩道<4498>

                          クルグマン・コラム ・米国債の格下げ(3)                  (1)〜(3)続く
                           
問題は算術ではなく政治にある                            

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 とはいえ、米国は確かに大きな問題を抱えている。
 米国が抱える問題は、短期的、中期的な予算の算術とはほとんど関係がない。(米政府は現時点の財政赤字を賄うために借金をすることに何の問題もない。確かに私たちは債務を積み上げており、いずれその利子を払わねばならない。だが、映画「オースティン・パワーズ」の悪役の)ドクター・イービルの物々しい声で大きな数字を唱える代わりに、実際に計算してみれば、向こう数年の非常に大きな赤字ですら、米国の財政的な持続可能性にはほとんど影響がないことに気付くだろう。
 むしろ、米国を信頼できないように見せているのは予算の算術などではなく、政治なのだ。与野党どちらも間違っているなんてお決まりの宣伝はやめようじゃないか。私たちが抱える問題は、ほとんど一方の側だけに関わるものだ。具体的に言えば、自分たちの要求を1
インチでも譲歩させるぐらいなら、再び危機をもたらすことも辞さない過激な右派の連中の台頭が引き起こしているのだ。
 純粋な経済学に関する限りでは、米国の長期的な財政問題の解決は、少しも難しくないはずだ。確かに現状の政策のままでは、高齢化する人口と増加する医療費が、歳入よりも歳出を急速に押し上げることになる。しかし、米国は、他のどの先進国よりも医療費ははるかに高い一方、税率は国際的な基準より非常に低い。医療費と税率の双方を、国際的な基準にいくらかでも近づけることが出来れば、米国の財政問題は解決されるだろう。
 なぜそれができないのか?この国には非常に強力な政治運動があるからだ。彼らは(高齢者向け医療制度)メディケアの基金をより効率的に使うための遠慮がちな努力に対してさえ「死の審議会」だと大騒ぎし、1kでも歳入を増やすことに同意するくらいなら財政破綻という危険を冒すことをよしとするのだ。  米国が直面する本当の問題とは、ここで1兆j、あそこで1兆jと赤字を削るかどうかではない。信頼するに値する政策をことごとく妨害する過激主義者を打倒し、追いやるこができるかどうか、なのだ。
(8月8日付)


'11.8.11.朝日新聞・米プリンストン大教授・パウル・クルグマン

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