散歩道<4497>

                          クルグマン・コラム ・米国債の格下げ(2)                  (1)〜(3)続く
                           
問題は算術ではなく政治にある                            

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 こんな連中が今度は米国の信用力について判断を下しているのかって?ちょっと待ってほしい。これでも前よりはましになっているのだ。米国債を格下げする前、S&Pはプレスリリースの草稿を米財務省に送った。財務省の当局者らはすぐさま、S&Pの計算に2兆jの誤りがあることを見つけた。誤りは予算の専門家なら誰でも正しく見極めることができて当然のものだった。議論の後、S&Pはしぶしぶ誤りを認めた。そして、リポートからいくつかの経済分析を削除してから、結局は米国を格下げしたのだった。こんな話を聞けば、S&Pの下す判断なんて、ほとんど信用できない。
 さらに言えば、各付け会社は、国の債務支払い能力に関する判断を私たちが真に受けてよい理由を示したことが全くない。債務不履行に陥りそうな国々はほとんんどの場合、実際に債務不履行となる前に格下げされたのは確かだ。だが、そんな場合には、格付け会社はただ市場の動きを後追いしていたに過ぎなかった。市場はその時はすでに問題を抱えた債務国に牙を向いたのだ。
 また、今回の米国のように、投資家達の信認を保っていながらも、格付け会社が格下げしたような珍しい場合には、各付け会社はいつも間違ってきた。S&Pが2002年に格下げした日本の場合を考えてみよう。そう、9年たった今も、日本は変わらず自由に、低い利子で借金をすることが出来る。実際、先週金曜日の時点で、日本の10年物国債の利回りはたった1%にとどまっている。
 だから、米国の格下げを深刻に受け止める理由はないのだ。連中の判断なんて、最も信頼できないのだ。

'11.8.11.朝日新聞・米プリンストン大教授・パウル・クルグマン氏

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