散歩道<4430>
文化・美の季想 ・ 省略の美学 ・・・・・ 発想を変える
想像力訴える 高級な手法(1) (1)〜(2)続く
「源氏物語」の主人公光る源氏は、生まれた時から世にも優れた美しさを備えていたという。物語のなかでは、「世になくきよらなる玉のおの子御子」と形容されている。この一句を、与謝野晶子は「またもないような美しい皇子」と訳した。「清らか」という言葉は、この時代、現代語の「美しい」とほぼ同じ意味を持つ言葉だったからである。
だが「清らか」とは、現代においてもそうであるように、本来汚れや余計なもののない状態を表す言葉である。とすればそれは、そのような状態を「美しい」と見る美意識があったことを物語っているであろう。
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芸術表現においてはこの様な美意識は、余計なもの、不要なものを思い切って切り捨てる「省略の美学」とでも呼ぶべき手法を生み出した。例えば室内を描くために、屋根や天井を取り除いてしまう「吹抜(ふきぬけ)屋台」がその例である。あるいは、ベルサィユ宮殿の庭園は色とりどりの花壇や噴水で飾られているが、京都御所の紫宸殿(ししんでん)の庭は清浄な白砂の広がりであることを思い出してもよいかもしれない。
洛中洛外図屏風*4(びょうぶ)でいたるところに金雲が描かれているのは、一方で装飾的効果をねらうと同時に、不用な分部を覆い隠すという役割りも果たしている。
'11.5.19.朝日新聞・美術史家・*1高階 秀爾様
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