散歩道<4428>
文化・定義集・大江健三郎・核の時代の混乱と霧どこへ
あいまいなまま続けさせるな(2) (1)〜(3)続く
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訳本には、反原発の理論家・実践者、高木仁三郎氏が早すぎた晩年、激務のなかで書かれた文章が寄稿されています。
『・・・この作品には私は、科学への問い詰めを通じての、著者の人類全体の将来への暗い予感を感じてしまう。(中略)一科学者として、ただ私は頭をうなだれるだけなのだが、あえて言えば、「ヴォルフさん、それでは、文学の方はどうなのですか、『そうなったら、さぞ、辛いことでしょね』と言ってこの作品を終わってしまってよいのですか」と言い返したくなる衝動を抑えられない。』
ヴォルフも、悪夢に苦しむ眠りにつく前の、しっかり目ざめている意識では、こういっていたのです。『わたしは・・・いつもよりいちだんと声を高めて・・・核技術のリスクはほかのいかなるものとも比較できないほど大きく、したがって、最小限でも不安定要素があればその利用を放棄しなければならない、と誰かに訴えなければならないと思いました。』
苦言は、チェルノブイリ事故の総体の調査が終えられていないことへの焦燥があったからです。氏のドイツの科学者である友人は、論文完成を前に研究を放棄したとのこと。
『・・・もっと私の頭を悩ますのは、そんな状況にも関わらず、基本的な霧を晴らす努力をするでもなく、各国政府やIAEA(国際原子力機関)は、あの事故のことは過去の出来事と済ませてしまって、以前と基本的に同じような原子力計画をつづけていることである。(中略)核の時代のツケがさまざまな形で混乱と霧とを広がらせ、「次のチェルノブイリ」を予感させるような事例はいくらでも挙げることが出来るが、殆どは世界全体によって見て見ぬふりをされているといってよいだろう』
'11.5.18.朝日新聞
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