散歩道<4401>        

                       経済気象台(663)復興財源論議への違和感

 20兆円ともいわれる復興財源を巡る議論が活発だ。所得税・法人税の増税。消費税率の引き上げ、国債増発などさまざまな選択肢とその是非について、多くの識者が議論を戦わせている。
 しかし、筆者は財源論議が先走りすぎているのではないかという強い違和感を持つ。
 第一に、復興そのものの中身が詰まっていない。復興構想会議は、被災地域の農漁業再生を最優先課題と考えているようだ。しかし大震災からの復興は、日本全体にとっての大きな課題でもある。
 サプライチェーンの途絶を機に強まる産業空洞化の懸念、災害に強く少子高齢化にも反応した都市づくり、自然エネルギーへの転換など電力不足への対処、分散・分権型経済社会の構築など、今後の日本のあり方を構想する文脈の中で、復興計画は考えられるべきであろう。それが白紙状態にある中で、支出規模や財源を巡る議論が。なぜか一人歩きしている印象がある。
 第二に、「支出額20兆円」を前提としてよいのか。その金額自体は、阪神大震災後の経験(復興事業費は累計で16兆円、うち国・県・市町の支出は12兆円という推計がある)などから類推されるものであろう。
 しかし、阪神大震災後の復興については、計画策定を急ぎすぎてハコモノ中心の事業になってしまったとの反省がある。新エネルギー向け投資など、民間資金を活用できる復興プロジェクトも少なくない。規制緩和も有効だろう。それらを踏まえてより効率的な支出を目指せば、財政負担はもっと少なくて済む可能性もある。
 20兆円を前提にした論議はどこか胡散
(うさん)臭いと感じるのは、筆者だけか。

'11.5.14.朝日新聞

関連記事:散歩道<検>災害、<検>経済気象台、<検>社説、