散歩道<4356> 
                            
                            社説・発送電分離 
                              
安定供給のためにこそ(2) 
              (1)〜(2)続く

 しかし実現には至らなかった。最大の理由は「電力の安定供給ができなくなる」と、電力業界が激しく抵抗したことだ。
 だが、今回の震災と原発事故で1ヵ所に集中して巨大な発電所をつくるやり方や地域独占による閉鎖的な経営形態は、いざという時の安定供給にとって大きな阻害要因になることがはっきりした。
 むしろ、小規模でも多様な電源による発電事業者を消費地近くに分散した方が、結果的に安定供給に資するとの認識は、これまで以上に高まっている。かっては電気料金を下げる効果が期待された発送電分離が、いまや電力の安定確保のための具体策として、その意義が語られているのだ。
 さまざまな自然エネルギーの活用を進めるためにも、分散型への転換が望ましいのは明らかである。
 ただ、電力会社が地域独占の維持を主張してきた裏には原子力発電という「国策」を、民間企業が肩代わりして進めるために必要なのだという理由づけがあったのも事実だ。
 菅首相が本気で発送電分離を進めるのであれば、個々の電力会社に半強制的に担わせてきた原子力政策そのものを再検討して、国が責任を持つ部分と、民間事業者や市場経済に任せる部分との線引きを、きちんとやり直すことが欠かせない。
 電気を使う側の私たちも、どんな形態が望ましいのかを真剣に考えるときだ。

'11.5.20.朝日新聞

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