散歩道<4349>
3・11・記者有論・温暖化防止策 (1)〜(2)続く
原発は「解」ではなかった(1)
福島第一原発事故がもたらした被害は想像を超える大きさだった。放射能汚染だけではない。周辺の街は風評被害という、もう一つの「見えない敵」にも苦しめられている。
「3・11で時計の針がとまったままです」。事故から1ヶ月の福島県いわき市。駅前で巻き返しの産直会を催していた渡辺市農業振興課長は嘆いた。原発から50`はなれ避難地域でもない。だが地元産野菜は最近まで小売業者から出荷を拒まれていた。出荷額で東北一を誇る、市内工場の工業製品も買い控えの対象になった。
映画「フラガール」の舞台として知られるスパリゾートハワイアンズは原発事故後、宿泊予約がすべてキャンセルされ休業に追い込まれた。
最初の爆発の後、市民の決済を担うはずの銀行もこぞって店を閉じた。みずほ銀行の支店は全行員に退去を命じ3週間余り業務を止めた。その異様さに、市民はますます不安になっただろう。
想定外であろうとなかろうと、いったん原発事故が起きれば、人々が失うものはあまりに大きい。
これほどリスクが大きな技術にもかかわらず、原発は世界中で空前のブームだ。未着工も含め200基近い建設計画が今も進められている。新たに導入を検討している国は20以上にのぼる。
'11.4.16.朝日新聞・編集委員・原 直人氏
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