散歩道<4342>

                          時事小言・原発と核兵器(1)                   (1)〜(3)続く
                          危険直視し具体策へ道を
          
 コンスピラシー・オブ・サイレンス、暗黙の陰謀という英語表現がある.目前の状況から目を背け、不正の横行や危険の拡大を見逃してしまう。原発事故を前にして感じたのは、それだった。原子力発電の危険性から目を背けてきたという、砂を噛(か)むよう思いである。
 福島第一原発の事故が起こるまで、原子力発電の安全性を疑う声は少なかった。 水力発電 火力発電、と違って生態系への打撃や二酸化炭素の排出の乏しい、廉価でクリーンなエネルギーとして原子力発電を評価する声が高かった。
 事故発生によって、原子力発電への判断は逆転する。電力の大量消費を見直すべきだという主張があふれ、原発すべての操業を停止すべきだという主張も極論ではなくなる。 
 従来から原発の危険性を訴える声はあった。幾重に安全設計を施しても、大規模な地震や津波が 安全設計のすべてを壊してしまえば壊滅的な災害となる。その可能性は、故高木仁三郎氏などによって指摘されていた。
 だが、その声に耳を傾けるものは多くなかった。少なくとも私は、不吉な予言から耳を閉ざし、原発の与える原子力を享受してきた。原発反対派が極端な議論をもてあそぶ「変な人たち」という立場に追いやられてゆくのを前に、私は何もしなかった。

'11.5.18.朝日新聞・東京大教授・*1藤原 帰一氏
 

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