散歩道<4310>
仕事力・誰でも、答えはまだこれから(2) (1)〜(4)続く
ガラスの天井を感じた
スポーツアナウンサーのだいご味味わう
スポーツの実況は準備と現場での瞬発力を必要とする仕事です。決して簡単なことではありません。一流のスポーツ選手たちが自分の限界に挑む、その場に立ち会えることは本当に大きな勇気をもらえる喜びでした。
例えば、1976年のモントリオール五輪のラジオ実況で予選から決勝まで全種目を担当しました。注目の的は、100b自由形決勝に出場した米国のジム・モンゴメリーという選手。彼は人類初の50秒の壁を突破し、49秒99という世界新記録をたたきだしました。
その4年後の冬のレークプラシッド五輪で、エリック・ハイデン選手がスピードスケートの500b、1000b、1500b、5000b、10000bと、男子の5種目全部で金メダルを取る偉業を成し遂げましたが、私は幸運にもその全レ−スの実況に携わりました。
自分から能動的な仕事ができると判断して自分から手をあげたスポーツアナウサーの仕事で、少しずつ状況は変化し、引退した野球のスター選手がキャスターを務めるなど、スポーツアナウンサーもその役割を侵食される事態が起きてきていました。
耐えがたかったアナウンス室の「白旗宣言」
スポーツ番組に元スター選手などを起用する動きに、私は危機感を感じました。先輩達全員に危機的な状況を訴えたのです。しかしなかなか分かってもらえませんでした。
またNHKでは常に、政治部、もしくは外信、特派員経験を持った人だけがメインキャスターになれるという暗黙のルールがありました。そうしてある日「報道局長と話をして、今後、アナウス室はすべて報道局の指示に従っていくことに致しました」と。
それはアナウス室の自己主張とか、異議とか、そういうものは一切配慮しないという内容で、私は「それはアナウンス室の「白旗宣言なのだな」と察知しました。アナウンス室はこれから、報道局の言いなりになって仕事をすると宣言したように感じたのです。目に見えないガラスの天井のような限界を実感し、私はここに居るべきではないと退職を決意しました。
組織の中では、まだまだ旧態依然とした価値観が存在しています。それが内輪だけのルールであることも多い。違和感を持ったら訣別する勇気も仕事では大切だと思うのです。
'11.3.6〜4.3.朝日新聞・アナウサー・草野 仁氏
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