散歩道<4300>
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「大人」の日中とは・忠恕(ちゅうじょ)の心で歴史を学べ
「日本と中国はアジアのリーダと見られているのに子供ぽい」。大人になるには共に歴史の勉強が必要だ。歴史認識を巡って日中間にきしみが続いている。反日デモの若者のプラカードに「靖国参拝反対」などのスロ−ガンに混じって「小国日本」等、罵詈雑言(ばいぞうごん)も数多く書かれていて悲しかった。戦前日本に留学した郭沫若や郁達夫の文学作品には、べっ称を浴びせられた屈辱へのうっぷんがにじみ出ている。隣国を侮辱するような言動は結局、自らの品位を下げる。ここ10
年の愛国主義教育によって若い中国人は戦争中の日本による残虐行為の写真や映像を見せられ、無意識に日本への憎悪感情を植え付けられてきた。そのことは今回の事件と無関係ではない。今まで、中国政府は「前事を忘れず、後事の戒めとする」日本に注文をつけてきた、それなら、侵略という不幸な歴史だけでなく,清末から中華民国初頭の中国近代化の黎明期(れいめい)において大勢の日本人が顧問、技師、教師、ジャーナリズムとして大陸に渡り中国の国家建設に青春の夢をかけたという史実も合わせて教えたらどうか。思想家の梁啓超の啓蒙(けいもう)運動も、孫文の辛亥革命も、犬養毅や宮崎滔天らの日本人志士からの多大な支援をえた、魯迅も日本製品を愛用しつづけた。当時の排日運動を覚めた目でみていたのだ。中国民衆の対日感情は官製メディアによって左右されることも多い。だから、靖国参拝や教科書問題と同様に、72年のに「日中共同声明」以来、日本政府が何度も「責任を痛感し深く反省」と表現した事実や、3兆円を越す円借款・無償資金協力、宝山製鉄所の建設援助、モンゴルの砂漠での植林活動など、日本側の善意も中国国民に正確に伝えるのが、フェアではないか。終戦時「徳を以(もつ)て恨(うら)みに報いる」と呼びかけた蒋介石の寛容、国交樹立の際、「戦争賠償の請求を放棄」と決めた周恩来の英断、そして85年の反日デモに、「平和、平等互恵、相互信頼、長期安定」の四原則を改めて唱えた胡耀邦の苦心。中国指導者の大人らしい度量に思いをはせるとなぜか心温まる。東アジアの環境問題、平和維持、経済発展など、日本、中国、韓国が協力して取り組むべき課題は色々ある。互いにけん制して対立するのではなく、相手の過ちを大目に見る「忠恕(ちゅうじょ)」の精神でいきたい。そのためには、日本人は侵略の加害者として歴史をもっと知ること、又中国人は近代化のモデルになった日本の恩恵を知る必要がある、日中の歴史は侵略の歴史ばかりではないことを思い起こして欲しい。
'05.6.14.朝日新聞、山陽学園大学教授・班偉(はんい)様
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