散歩道<4299>
時事小言・災厄と評論・(3) (1)〜(3)続く
霧の中で選択肢探る
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それでは、過去を振り返るのではなく、現在に身を置いて、その場での選択を語ることはできるのか。選択提言などとたいそうな物言いをする前に、そもそも霧の中で選択肢を考えることはいったい可能だろうか。
『時事小言』(しょうげん)は、*3福沢諭吉が評論に付した題名のひとつである。なかには、脱亜論を典型として今なお論争を呼ぶものが含まれ、時代を感じさせる文章も少なくない。だが、執筆から百年以上を経た今も、福沢の言葉の緊張感には揺るぎがない。さらにいえば、自分の言葉で考えることの喜び、いわば悦(よろこ)ばしき知が、どの文章にもあふれている。
もちろん福沢を気取る資格は私にはない。それでもあえてこの題を選ぶ理由は、書かれてから遠く隔たった後でも読むに堪える時事評論があり得ることを『時事小言』が示しているからだ。同時代に身を置いて現在の意味を探ることができなければ、学者をする意味はない。
考えるべきことは多い。自民党政権が倒れて政権交代が実現しながら日本の政治に新しい可能性が生まれた手応えはない。震災を転機として日本の再生を求める議論は多いが、震災前の安定をとり戻せば事足りるのか、廃炉も含めた根本的転換が必要なのか。私自身をとらえる通念や偏見をできるだけ突き放し、何ができて何ができないのかを考えること。そこがこのコラムの目的である。
'11.4.20.朝日新聞・東大教授・*1藤原 帰一氏
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