散歩道<4295>
                              社説・イレッサー判決・(2)                              (1)〜(2)続く
                         欠陥情報が広げた被害

 二つの地裁判決を受けて今後どうするのが公の利益にかなうのか、関係者は考えなければならない。
 高裁に舞台を移して引き続き争う道はある。だが、そこからどれほどの収穫を得るとができるだろう。
 例えば患者側は、承認時だけでなく販売開始後の政府の処置にも問題があったと訴えてきた。ところが東京地裁はこの点について判断しなかった。
 そこまで立ち入らなくても判決の結論に変わりはないためで司法の世界ではよくある話だ。とはいえ、一連の経緯の解明と再発防止という観点に立つた中途半端で、裁判手続きの限界を感じざるを得ない。
 大切なのは、情報を共有し、場合によっては責任論を一部棚上げにしてでも、実際に何があったのか、どのような限界があり、何を誤ったのかをはっきりさせることではないか。
 それが、副作用被害を受けた人やその家族に対する答えになるし、現にイレッサーを服用して効果を上げている患者の安心にもつながる。
 私たちはかねて患者、国、企業の三者が和解のテ−ブルに着いて早期解決を図るべきだと主張してきた。そのうえで検証作業に取り組み、あわせて、がん治療役を対象外にしている健康被害者救済制度の見直しなどの政策課題について議論を交わせばいい。
 薬効への期待が先行し、危険情報が医療現場に正しく伝わらなかったことがイレッサー禍を大きくした。薬害にとどまらず、行政、企業、市民がそれぞれの立場それぞれの局面で、ともにくむべき教訓があるように思う。

'11.3.28.朝日新聞

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