散歩道<4272>
ザ・コラム・3・11の衝撃(1) (1)〜(3)続く
9・11しのぐ文明への影響
あの3月11日から1週間後に東北地方の上空を北上し、変わり果てた被災地の姿を眼下に呆然(ぼうぜん)と見つめながら、脳裏に浮かんだのはもうひとつ「11日」だった。くしくも10年前、たまたま米国滞在中にでくわした9・11のことである。
テロリストたちに乗っ取られたジェット機が世界一の巨大ビル2棟に相次いで突っ込み、無残に崩壊させたあの情景は誰しも忘れまい。その2週間後、厚い灰に覆われてなお異臭の漂うニューヨークの現場を訪れた私には、やはり言葉がなかった。テロと天災という違いはあるが、今度もCG映像かと見まごうようなテレビの画面が世界に衝撃を広げた点でよく似ている。
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ともに、その日から世界が変わってしまうような歴史の境目でもあった。
9・11はイスラム過激派によるテロの恐怖を世界に拡散させ、ハンチントン教授の語る「文明の衝突」がもてはやされた。背景にあるのは米国を中心とするグロ−バリゼーションのひずみだったのだが、米国は一夜にして愛国の熱気に包まれる。時のブッシュ大統領は「これは戦争だ」と叫び、アフガニスタン攻撃ばかりかイラク攻撃にまで突っ走るのだった。
一方、3・11では日本人の冷静さが対照的だったが、衝撃は質を変えて次第に大きく広がった。福島第一原子力発電所のあちこちが壊れ、放射能汚染の恐怖を振りまくようになったからだ。もたつく対処にいら立ちが増し、いま無残な姿をさらす施設の映像は、見えない放射線への恐怖を世界で撒き散らしているに違いない。
'11.4.3. 朝日新聞・本社コラムニスト・*1若宮 啓文氏
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