散歩道<4269> 

                                  オピニオン歴史のいま
                        復興は必ずできる東洋のポルトガルそれも悪くない(4)                  
(1)〜(6)続く


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 近代世界を一つのシステムとしてみる考え方があります。アメリカの社会学者ウォーラステインが「世界システム」と名付けました。
 これによると、世界システムは16世紀の西ヨーロッパを中心に生まれました。その後、大西洋を渡ってアメリカに重心が移っていくのですが、全盛期の西ヨーロッパ諸国の中でも消長や興亡がありました。先頭を切ったのはポルトガルとスペインでしたが、やがてオランダやイギリスに抜かれました。
 いま「21世紀は東アジアの世紀」と言われ、世界システムの重心がアメリカから東アジアに移ろうとしています。もともと東アジアで先頭を切ったのは日本でした。しかし、今後もずっと続くとは限りません。日本は東洋のポルトガルになるのか。私は以前から気になっていました。
 東日本大震災にからんでメディアで語られるのが、18世紀半ばにポルトガルの首都リスボンを襲った大地震と津波です。人口の約3分の1が亡くなったといいます。これがポルトガル没落の直接の契機だとみるのは正しくありません、重要なのは、震災前から地位が低下していたところを襲われたことです。大災害はすでにおきていた流れ、特に後退気味の傾向を早めてしまうことをポルトガルが教えてくれます。
 日本の場合も「中国に追い越されてしまった」「東アジアの盟主の地位が危ない」と思っていたところに、大災害が来た。今後ポルトガル、と同じような経緯をたどるのかどうか。まだわかりませんが、心理的なダメージを受け、国力やステータスがずるずると落ちていってしまわないとも限りません。

'11.4.1.歴史家、大阪大名誉教授・川北稔さん

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