散歩道<4208>

                           ザ・コラム・逆境のジャパン(3)                    (1)〜(3)続く
                            立ち向かう姿に賛嘆のまなざし

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 もうひとつ海外のメディアが注目している現象がある。
 日本では被災地であからさまな便乗値上げが横行しないことだ。水や米が地震前と同じ価格で売られ、しかも人々はがまん強く、店の前に何時間でも列をなして待っている。
 「日本以外ではまず考えられないことです」と話すのは、マイケル・サンデル米ハーバード大学教授。日本でも有名になった哲学講義「白熱教室」で、フロリダ州の被災地で実際に起きたあくどい便乗値上げをクラス討議の題材に取上げてきた。
 ハリケーン被災者の窮状に業者がつけこみ、ホテルの宿泊料はたちまち4倍になり、発電機の価格は8倍に跳ね上がり、倒木処理費が200万円に高騰した。ほんの7年前のことだ。
 「日本では、いくら街が廃墟になっても、人々は自制心をゆるめず、わが街のために結束している。被災後の市民のふるまいには胸を打たれました」。教授は日本に友人知人が多く、先週来、テレビやネットにかぶりついて日本の動きを追っていると話した。
 百年に一度とも千年に一度
*1とも論じられる地震の破壊力を目の当たりにして、各国が、これまで世界一と信じた日本の震災対策の限界を悟った。日本ですら津波を予知予防できなかい現実におびえ、安全を誇った原子力発電所からあがる白煙に身震いした。
 それでもなお海外の人々は、日本の被災者たちの沈着で節度ある態度に賛嘆を惜しまない。苦境にあっても天を恨まず、運命に耐え、助け合う。日本の市民社会に対する世界の信頼は少しも揺らいでいない。


'11.3.16.朝日新聞・ニューヨ−ク支局長・山中 秀広氏

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