散歩道<4207>

                            ザ・コラム・逆境のジャパン(2)                    (1)〜(3)続く
                            立ち向かう姿に賛嘆のまなざし

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  各国取材陣が驚きの視線で報じているのが、甚大な被害を受けながら日本の人々が少しも節度を失わないことだ。先のインドや中国の報道でもわかる通り,災害見舞いのリップサービスといった書きぶりではない。すすんで食べ物を分かち合う被災者の姿に感じ入り、怒号もけんかも起きない避難所の静けさに心動かされているのだ。
 そのひとり、ニュ−ヨーク・タイムズ紙のニコラス・クリストフ元東京支社長は「罹災
(りさい)しても日本社会は整然としていて秩序に乱れがない。日本人の忍耐力と回復力は尊い」と書いた。本人に思いを尋ねてみた。
 「阪神大震災で会った被災者が実に立派だからです。繁華街で店という店のガラスが割れ、商品が手の届く先に見えているのに、誰も盗もうとしない。救援物資を待つ列が長くても奪い合いすら起きない。感心しました」
 神戸で取材中、念頭にあったのは各国で地震のたびに起きる商店襲撃のことだった。きっと神戸でも混乱で商店街は荒らされるだろうと予測したが、ついに略奪の実例を見かけることはなかったそうだ。
 なるほど天災の直後には多くの国で略奪や強盗が起きている。昨年の中米ハイチ地震では住民がスーパーからどやどや勝手に商品を持ち出した。ハリケーン・カトリーナに襲われ米ルイジアナ州では6年目、群集が店のドアを蹴破り、液晶テレビやDVD、バスケットボール練習台まで盗み出した。
 こういうひらきなおったような略奪は日本ではまず起きない。今回の地震でも実際には盗みの被害がでているが、群集によるものではない。海外の感覚からすると、暴徒を見ない日本の被災地の静穏さはそれだけで称賛に値する。

'11.3.16.朝日新聞・ニューヨ−ク支局長・山中 秀広氏


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