散歩道<4182>

                     文化・日本滑落GDP世界2位→3位
                            
国の底を確かめる機会(2)
             (1)〜(2)続く

 島国だから、国境での異民族とせめぎあいを通して自己形成してこなかった。なれあいの中で生きてきた。だから、歯止めがきかない。戦争では悲惨な膨張主義に走り、経済は高度成長を突っ走った。果たして内面を鍛えることに寄与したかというと、全くそうではなかった。
 私の世代の青春期は、ずっとデフレなわけです。平均給与も下がっていく。そこで、ネットとか刹那的な恋愛とか、人生なり実存なりをかけなくてすむ慰みでやりすごしているのが実情だと思います。何かもっと大切なものがあるんじゃかいかと探し求めたのは、私の少し上の世代が最後かもしれない。内実のなさに開き直るような精神性が、発酵に次ぐ発酵を重ねている。
 今後、日本は盛り上がることなく、退屈な日々が続いていくのでしょう。そのつまらなさに耐えることができるか。戦前もそうですが、うっ屈した気分が続くと一発逆転をねらう。そっちの方向に行かないで退屈さを楽しむことができたとき、成熟があると思います。あまり楽しくはないでしょうけど。
 希望があるとすれば、実に絶望的希望ですが、お金持ちであるという身も蓋もないアイデンティティーがはがされた日本という国の底を、確かめる機会じゃないか。小さな政治を好む日本人の底意地の悪さに気づき、本当にダメなんだと徹底的に傷つく機会。地に落ちて、それが自分たちなんだと自覚できる精神の強靭さがもてれば、ラッキーじゃないかと思う。

'11.2.25.朝日新聞・詩人・岸田 将幸さん               

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