散歩道<4179>

                          文化・日本滑落GDP世界2位→3位             (1)〜(3)続く
                          「脱成長」新しい価値観を(2)  

 3番目の転機
 そして今回が3番目の転機でしよう。リーマン・ショックでアメリカ中心の金融グローバル経済がうまくいかなくなった。日本も大きなダメージを受け、しかも回復が遅い。一方、いち早く立ち直ったのが中国です。政府の力が非常に強く、強力な戦略を打ち出せた。冷戦崩壊で自由民主主義が広まったはずなのに、グローバリズムの進展で強権的な要素を持つ国が有利になるという奇妙なことが起きている。

沈む民主国家
 民主主義の先進国は軒並み政府が弱体化しています。経済が成熟しているから後発国の追い上げで相対的に地盤沈下する。中間層が育ち平等化も進んでいるため、経済のパイが増えず分捕り合戦になり格差が広がる。すると生活が悪くなる層が不満を持ち、政権を次から次へと取り換える。日本が典型です。
 思うに、60年代の高度成長がうまくいきすぎた。70年の大阪万博を頂点とする豊かになった感覚が思考を眠らせ、経済成長に代わる価値観を提示できなかった。大平首相の時の田園都市構想のように散発的な議論はあっても、大きなビジョンは作れなかった。高度成長を支えた構造がなくなっても思考停止が続いていることが問題なんです。
 日本人は今、完全に自信喪失しています。生活が脅かされているという不安やあせりからか、とにかく「開国」を急げとか、技術力はまだあるから大丈夫とか、議論が単純な白か黒かの話になる。国も地方もそういう形でしか政治が動かなくなっていることは、日本の民主主義が陥ったワナです。


'11.2.23.朝日新聞・京大教授・*1佐伯 啓思氏

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