散歩道<4171> 
                        
                           クルーグマン・コラム・世界食糧危機(3)                   (1)〜(4)続く
                            温室効果ガスへの無策のツケ      

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 小麦を例に考えてみよう。小麦の価格は昨夏からほぼ倍になった。価格が急騰した直接の原因は明らかだ。世界の小麦生産が急激に減少したからだ。米国農務省のデータによれば、小麦生産の減少の大部分は、旧ソ連地域の急激な落ち込みによるものだ。私たちはそれが何のことかを知っている。モスクワの最高気温が初めてカ氏100(37.7)度を越えたほどの記録的な熱波と干ばつである。 
 ロシアの熱波は、世界の食料生産に打撃を与えたブラジルの乾燥からオーストラリアの途方もないほどの洪水まで、最近起こった極端な異常気象のほんの一つに過ぎない。
 ここで疑問は、こうした異常気象の背後にあるのは何か、となる。
 私たちがいま目にしているのは、ある程度まではラニーニャと呼ばれる自然現象の結果である。ラニーニャは赤道付近の太平洋の海水が定期的に、通常の温度より冷たくなって起こる。歴史的にみてみると、ラニーニャは07年から08年にかけて起こった危機をはじめ世界の食料危機と関係しているのだ。
 しかし、これが話の全体ではない(今冬のニューヨークの)大雪にだまされてはいけない。地球規模でみれば、太陽の活動が極小期で、年後半はラニーニャが気温を下げる要因だったとはいえ、10年は05年とともに最も気温の高い年だったのだ。ロシアばかりでなく19カ国で最高気温を更新し、それは世界の陸地面積の5分の1にも達した。干ばつと洪水はどちらも温暖化する世界の当然の結末なのだ。つまり、干ばつが起こるのは暑いからであり、洪水が起こるのは暖かくなった海洋がよりたくさんの水蒸気を放出するからである。
 
'11.2.10.朝日新聞 *1クルーグマン

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