散歩道<4164>
   
 
                         耕論・オピニオン・スフィンクスが動いた(2)                        (1)〜(3)続く
                            
     「人民に属する」軍、国守る

 エジプト軍の政権への忠誠度は大変安定していた。チュニジア政変のように軍が急に態度を変えることがなかったのは、その証拠とも言える。また、大統領をはじめエジプトも有力者の多くは軍出身者で占められ、軍はいわゆる体制派だ。ではなぜ、軍は政権擁護のためにデモの鎮圧をはかろうとしなかったのか。
 多くのエジプト国民は、軍のことを信頼し、尊敬している。エジプト憲法第180条は、「軍は人民に属する」「軍は人民の社会主義的闘争による成果を保護する」と規定されている。この精神は軍全体に脈々と受け継がれており、貧しい国民に食料を配布したり、世界最多の遺棄地雷が埋まる国土を農業などに生かすため、地雷処理作業に力を入れたりしている。
 軍が軽々に部隊を動かすことなく、ムバラク政権との関係を適度に保ちつつも、民意に沿った対応をとったのは、そうした独特な精神風土に由来する部分が大きかった。政権に対するのと同様、あるいはそれ以上に国民を大切にし、大統領個人よりも国家を守ろうとしたと考えられる。
 
前在エジプト日本大使館防衛駐在官・嶋本学さん 

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