散歩道<4156>'

                            記者有論・科学カフェ(2)                  (1)〜(2)続く
                        素人にも発信の場がほしい

  こうしたなかで、平川さんと阪大特任准教授の八木絵香(えこう)さんたちのグループが試みているのが素人だけの科学カフェだ。
 科学カフェは、喫茶店の雰囲気で科学談義をという試みだが、どうしても専門家の話を聴くことが中心の科学教室風になりがちだ。そこであえて専門家をはずそうというのである。
 いま力を入れているテーマは再生医療。病んだ臓器を自分の細胞をもとにつくり直すことも夢でない、とされる先端医学である。関西を中心に回数を重ねてきた。そのカフェの発言記録をみせてもらうと・・・・。
 そこでは再生医療に対し、脊髄
(せきずい)損傷の人が歩けるようになる、美肌を保てれば豊かな気持ちになる、などの肯定論が出る一方、薬物を乱用しても臓器を替えればよいという人が出てこないか、医療費が増えないか、などと心配する声もあった。
 「生命観が変わる」という予感もあるようだ。不死身に近づくことで「生きる意味を失って生きそう」と恐れたり、生命もゲーム同様、「リセット」できると感じるようにならないかと懸念したりする人もいる。
 専門家でなくとも科学技術の未来図を思い描く。「素人カフェは、ふつうの人が白紙の状態で何を考えているか、その多彩な言葉を紡ぎだすことに意味がある。科学者も学ぶことが多いはずだ」と平川さんは言う。
 素人が素人の発想を大事にしながら思考と論理を磨く。それが、科学者との対話を実らせる第一歩になるかも知れない。

11.2.17.朝日新聞 編集委員・尾関 章氏 

関連記事:散歩道<検>科学、<検>発想、