散歩道<4155>'
記者有論・科学カフェ(1) (1)〜(2)続く ・・・・・発想を変える
素人にも発信の場がほしい
科学者と世の中のかかわりを考えるとき、鍵になりそうな言葉が「なしだけ」だ。
私たちの周りには、科学「なし」には解決できないが、科学「だけ」では答えが出ないことがある。この時代、そんな「科学なし/だけ問題」が増えた、と科学技術社会論が専門の大阪大学准教授平川秀幸さんが書いている(NHK出版生活人新書『科学は誰のものか』)。
これは、私のような科学記者の実感にぴったり重なる。
たとえばDNA。2003年、その二重らせんに書き込まれた人の全遺伝情報(ゲノム)の解読が完了した。いまや、がんなど多くの病気が遺伝子と関係していることがわかり、診断にも治療にも創薬にもDNAの知識が大きな力となっている。
半面、遺伝子を調べれば病気のかかりやすさがわかる時代にもなりつつある。覚悟を決めて将来のリスクをすべて知るべきか、知らずにいる選択肢もありか。これは、科学と別の人生観や幸福観が絡む問いだ。
「なしだけ」問題を考えるには、「なし」にも「だけ」にも偏らない視点が求められる。
科学なしで事は進まないのだから科学者の発信は必須だが、その舞台となる学会や論文誌はすでに用意されている。ところが、科学だけで事を進めてはいけないのに、専門外の人々がものを言う場は少ない。
11.2.17.朝日新聞 編集委員・尾関 章氏
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