散歩道<4149>

                                    ザ・コラム・GDP(4)                     (1)〜(4)続く
                               日中逆転から何を学ぶか

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 GDP逆転に何を学ぶのか。今回最も印象的だったのは、王敏
*2・法政大教授の言葉だった。
 「GDPは貯金通帳のようなもの。増えた、減ったということに意味はない。問題の核心は、国民と社会が継続して発展しているかどうか、です」
 在日30年。王教授はその間、日本が目に見える経済の統計値を高めることに躍起になり、世界から注目されるのを見た。だが一方では、目に見えない倫理や美徳が枯れ細った。受け継がれた「しつけ」は劣化し、戦前と戦後生まれの日本人は、別人種のようになったという。
 「勤勉で、まじめで、思いやりのある人々がいかに堕落できるのか。悔しいけれど私が証人でもある。90年代以降、経済だけが日本人の価値の中心軸になったからではありませんか」
 GDPでのみ「大国」かどうかを測るのではなく、伝統的な美徳という日本の資産をどうか、大切にしてほしい。
 王教授の言葉に虚を突かれ、こう思った。逆転に学ぶべきは、私たちがGDPに一喜一憂するのではなく、「経済大国」意識から自由になり、多様な価値観に立って、誇りや希望をもつことではないか、と。

'11.2.9.朝日新聞 編集委員・*1外岡 秀俊氏

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