散歩道<4148>

                                ザ・コラム・GDP(3)                     (1)〜(4)続く
                            日中逆転から何を学ぶか

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 急成長を続ける中国にも懸念はある。中央や地方の共産党幹部一族が利権を握り、貧困層との格差が広がっていることだ。興梠
(こうろぎ)一郎*2・神田外語大教授は、中国で「一家二制度」という言葉を聞いたことがある。返還後も香港の自冶を保障した「一国二制度」のもじりだ。「中国は、共産党支配のまま市場化した。党幹部は清廉に見えても、許認可で一族の企業が潤う。かって日本の財テクのように、最近は国有企業までが不動産投機に手を出し、一種のバブル状態になっている」中国では国が土地を所有し、民間人は住宅を買っても、70年間の「使用権」を得るだけだ*3。党幹部が「開発」や「リゾート化」を指示すれば、「公共」の名目で住民が追い出される。住民への安い補償費と市場価格の差が、そっくり政府と業者の手に入る。一種の錬金術だ。「地方政府の幹部の評価はGDPで決る。競って開発し、投機と相まって不動産が急上昇した。食料品も上がり、一般庶民の不満が高まっている」
 興梠教授の懸念を裏付ける資料がある。昨年暮れに「ウィキリークス」が暴露した公電だ。09年7月、北京の米大使舘発の公電は、指導部に近い複数の関係者の証言として、「党中央政治局は.大企業の取締役会のようだ。意思決定では既得権益の保護を重んじる」と指摘した。関係者は、異なる党幹部一族がそれぞれ電力、石油、銀行などの基幹産業を支配している、と実名をあげて証言した。
 こうした権力と利権の寡占は地方の隅々にまで及ぶ。「成長一辺倒から富の「分配」に向わなければ、いつの日か民衆の怒りは爆発する。中国の歴史が、そう教えている。

'11.2.9.朝日新聞 編集委員・*1外岡 秀俊氏

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